「何を言いだすかと思えば…面白い娘だ」
土田の口調は柔かだったが、その相貌は全く笑っていなかった。
「敵の動きは余りにも迅速でした。近くの前線からの到着時間と全く計算が合いませんわ。最初から部隊の展開を完了していたとしか思えません。そして我々は『UnHappyNewYear』唯一の生き残り……」
「何が言いたい?」
「関東司令部の力を以てすれば簡単に“あの日”撃墜された死亡艦に仕立て上げられるという訳です」
「誰がそんな真似をする?」
「………分かりません。月のスパイ、或いは」
滝川は土田の目を見据え、力強く言った
「裏切り者」
土田はどかりと椅子に倒れこみ、煙草を吹かし始めた。
「そのような事があるなら大事件だ。放ってはおけん。けしからん事だ」
「ええ、大事件ですわ」
「その調査は必ず進めておこう。君が気にする必要はない」
『気にする必要はない』つまり、余計な詮索は無用。黙っていろ。という訳か。
「時に恵美君。かの兵器に搭乗していたパイロットを捕えたそうじゃな」
そう言えば。
滝川は辺りを見渡した
彼女はさっきから滝川と土田の間にちょこんと座り、小さくなっていた。