私はあなたが嫌いだった。無口で笑わないし、不愛想だし。出席番号が同じで隣の席に座ってたけど、何だかすごく苦手だった。
でも、晴れた五月のある日。授業中に窓の外を眺めながら、左手でペンを回すあなた。何でだろう?私、嫌いなのに見とれてしまう。
回るペンが私に魔法をかけた瞬間。
それから少しして男子と掃除中にじゃれあって笑ってるあなたを見かけた。テストが解らなくて頭を抱えてるあなたも、落ちたペンを拾ってくれたり実は優しいあなたも…
私は、どんどん好きになる。
嫌いから好きに変わると冷めにくいって、どこかで聞いたことがある。
あなたは隣にいても気付かない。
今度は私があなたに魔法をかけたいな。昼下がりの授業は退屈だから、ちらりと横目であなたをみる。
居眠りするあなたにときめきを覚えながら、私は大きく深呼吸する。
窓から吹き抜ける風は少し海のにおいがした。