「…名前を教えてもらおうか」
「アキです」
「アキ……?日系か?階級は何だ」
「知りません」
アキは緊張しながらも、荒木の質問にはっきりと答え続けた。
「階級が無い?軍人ではないのか」
「一応軍人です」
「なら階級くらい!」
「いい、荒木。御苦労」
荒木を制して土田はアキに向かい合った。
「お嬢さん。新WWは君が乗っていた物じゃな」
「…」
「怯えなくていい」
「うん」
こんな娘が“運命”の最も大きな歯車か。
「あ、あの“子”、雪みたいでしょ?真っ白で、優しくて」
「?」
「なのに冷たい」
「“博士”は言ってました。『足りない』って、何かが足りないの。あの子には」
「博士?」
「兵器開発の研究者でしょう。それで、何が足りないんだ?」
「知らない。でも、いつも足りないってこぼしてた。だからって、あたしを叩く事ないのにね……」
頬を擦り、アキは笑った。
しばしの沈黙。彼女の痛々しい姿に扇情的な何かを見いだしてしまったのは荒木だけだったろうか
沈黙の後、土田はゆっくりと腰を上げた。
釣られて滝川と荒木も立ち上がる。
「滝川恵美少佐。新たな任務を与える」