指輪を無くした。
ずっとつけていた指輪。
酔っ払って、何を話したか、誰に喧嘩を売ったか、どの道とおって家に帰ったか、覚えていなくても、あの指輪は無くさなかったのに。
無くしても、一緒に呑んでた同僚が翌日、もってきてくれたり。
なにかと、私の元に戻ってきていたのに。
いよいよ無くした。
自分で買った、たかが5千円くらいの指輪だけど。
あの指輪を無くしたおかげで、雅樹と別れたむなしさを、紛らわすことができているのかもしれない。
指輪は、ずっと身につけていた。私のそばにいた。
雅樹は、私のそばには、いなかった。
あの指輪。何年前に買ったんだっけ?
新しい指輪を買わなくちゃ。
次は、なんの石にしよう。
でも、指輪より、次の男をさがしたほうがいい。
指輪も、自分で買わないで、買ってもらえばいい。
だけど。私が欲しいのは、指輪じゃない。
指輪を買ってくれる男じゃない。