なんかオカシイよ…。
高瀬美羽は不可思議極まりない気持ちで、親友である大橋リノを見た。
リノはついこの間まで事故に遭い、入院していたのだ。
が、ようやくこのほど退院したのだが…。
やっぱり変!
いつものように楽しげに笑いあう仲間に混じっている時、ほんの一瞬…リノは遠い目をする…。
その目は、美羽を心底ドキッとさせる。
淋しい…?いや、そんなんじゃなく…もっと深い…哀しみ?
中学生が見せるには余りにも大人びていて、美羽は自分が男なら、きっと放っておけないだろうな…などとつい考えてしまうのだ。
ちぇっ!ただでさえ頭も顔もいいのに色気まで揃えるなんてずるい!
今日こそは、リノに何があったか聞くつもりだった。
リノには絶対、秘密があるに違いない。
やっかみながらも、美羽の本当の想いは、リノが何か遠くへ行ってしまったようで寂しいのだ。
なんでも打ち明けている自分にたいしてフェアじゃない気がしていた。
「とゆーわけで、わたしゃ今日、あんたんちに行くからね」
切り口上で告げる美羽にリノは苦笑いする。
「だから…今日は生徒会があるって言ってるのに…強引なんだから」
そう。
これもオカシイことの一つ。
あれほど嫌がっていた生徒会長を、何故か事故以来やる気になっていたのだ。
強引上等!
絶対、締め上げる!
決意に燃える親友をそのまま置き去りにして、リノはそそくさと鞄をまとめ始める。
「待ってるからね」
「はいはい」
諦めたように笑って、その後、ふっと真顔になった。
「…でも待つなら校庭にしたら?」
「…なんでよ」
困ったように、うーんと呻いて…
「学校に閉じ込められちゃうかも」
「…は?」
リノの事故は学校で遭ったことだから、トラウマにでもなってる?
ポカンとしつつも、リノの心の傷には触れないよう、美羽は快活に笑ってみせた。
「大丈夫よぉ〜!学校側もしっかり工事したんだし。ねっ、気にしないで行ってよ」
「そういう意味じゃないんだけど…まあ美羽は平気かな。そういう世界に縁がなさそうだし」
?
世界…?
リノ…頭の精密検査受けたんだよね??
軽やかに教室を出ていく後ろ姿に、美羽は一抹の不安を勝手に感じていた…。