後悔していた
彼女に話さなかった事を
脳裏から消せない
聡明な女性である
話せばわかってくれた筈だその日の仕事は
夜１１時過ぎに終わった
マンションに帰ると
千尋が食事もせず
僕を待っていた
風呂に入り
二人で夕食を食べた
今日も千尋は求めた
昨日と同様に
何かに取りつかれた様に
執拗に！情熱的に！
昔の彼女が甦る
いつしか
千尋と僕は眠っていた
そしていつものように
朝を迎える
僕は彼女にメールを
返信していない
返信しないままに
いつものバーへ
彼女はいつもの場所に
座っていた
隣に座りいつものバーボンを頼んだ
グラスの中の氷のとける音しか聞こえない
「すまなかった」と
それしか言えなかった
それ以上は言えなかった
千尋の自殺の事情など
言えなかった
彼女は僕の腕時計を指でなぞりながら「それでも忘れられなくて」
時間は過ぎて行った
二人はバーを出た
そしてタクシーに乗り
僕は彼女を家まで送った
その時僕は
千尋の視線など
気づくわけなどなかった
マンションに帰ると
千尋は起きてきて
「お帰りなさい」
「ただいま」
シャワーを浴び寝た
千尋もまた
僕の横で眠った
千尋の生暖かい肌が
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