新春1月中旬
6万人の観客が見守る中に彼はいた。
〜国立競技場〜高校サッカーの聖地と呼ばれる場所。
彼、山下 礼人(やました れいと)はそこで見た高校最高峰の試合を胸に刻み、いつかこのピッチへ立ちたいと…
が、現実は厳しい。
彼が住んでいる所はド田舎で、当然、高校も小さくサッカー部の人数も足りない学校だった。
彼は1年間公式戦に出ていない。
けれど、彼は夢をあきらめていなかった。
キーンコーンカーンコーン
授業が終わり礼人にとって1番楽しみな時間がくる。
「さぁて、練習しようかなぁ。」
ボールを倉庫から出し、壁にむかって蹴り始めた。
「山下またやってんのか。」
「はい。もっとうまくならなきゃいけませんし。」
「んじゃ俺がまたマークについてやろう。」
「ほんとっすか!?んじゃ今日もよろしくお願いします。」
こんないつもどうりに今日もすすんでいくはずだった…………が!
それは1本の電話からだった。
「はい、山下ですが。」
「おう礼人か、父さんだ!」
どうやら話相手は父のようだ。
「何?」
「聞いておどろくな、父さん広島に転勤になってなぁ。」
「えっ?転勤?」
礼人は突然の出来事に驚いた。
「で、いつ広島にいくの。」
「今週中にはいくつもりだから、母さんに言って引っ越しの準備をしなさい。お前や海菜の新しい学校も、支部長が決めてくれたから心配しなくていいぞ。じゃよろしくな。」
「あっ、ちょっと…切れちゃたよ。」
礼人は呆然としていたが、その後母に引っ越しの事を告げて準備にとりかかった。
翌日よく練習に付き合ってくれてた先輩にその事を話すと…
「寂しくなるなあぁ。」
「いままで本当ありがとうございました。」
「まぁあっちでも頑張れよ。お前は小さいわりにフィジカルあるからなんとかなるだろ。」
「はい。そして絶対全国に行ってみせますよ。」
「おう。」
礼人はそういう事がありながら最後の登校を終えて、引っ越しの準備にとりかかった。
夜遅くになって、父が会社の送別会から帰って来て礼人の部屋へ入ってきた。
「これが新しい学校だ。サッカー部は昨年、県でベスト8に残ったそうだぞ。」
「県立三日市高校かぁ。」
「まぁ明日にそなえてそろそろ寝ろ。」
「うん。」
こうして明日にそなえ礼人は寝た。