「大丈夫か少年?」
彼は言った
少年という言葉はむしろ彼に対してのほうが適切かもしれない
寝癖なのかわからないが外にぴょんぴょん跳ねたボサボサの髪
背は160ちょいくらいかな(自分の身長が178あるんで恐らくそれぐらい)
目は大きくて真ん丸だった
どこと無く大人びてはいるがどこかに可愛さがある
そんな印象だった
しかし少年呼ばわりされる義理はない
「鼻血大丈夫?」
少年は少し笑いながら聞いてきた
「大丈夫だよ、これぐらい」
できるだけ平気そうに僕は言った
本当は少しパニクっていたんだけど
「大丈夫なら良いんだけどさ、少年はここで何してんの?」
少年は安堵の表情を浮かべながら正直聞いて欲しくないことを聞いてきた
どうする?
自殺しようとしたらあなたにびっくりしてこけましたなんて…
言いたくない…
一度は死のうとした人間もやはり面子は気にするようで
格好悪い
それが僕には非常に苦痛だった
「関係ないだろ」
精一杯の言葉でした
だって下手に言い訳してもさ
口下手ですし…
「ぇ-気になる…」
少年はしょんぼりしていた
何なんだ、こいつは?
「んじゃ僕用事あるから…」
早く立ち去ろう
関わらないほうが無難だ
下り階段に向かって歩き出した
「ねぇ-少年??」
また少年が口を開いた
仕方なく僕はもう一度彼を見た
「今を変えようともしていないのに逃げるなよ」
彼の声が静かに響いた
その瞬間風は止まり、周りの雑踏すら音を無くした
まるで彼が彼以外のスピーカーのスイッチを切ったみたいに
僕は彼から目を逸らすことが出来なかった
すべて見透かされている気さえした
身動きすらとれない
「あれ?用事は?」
少年の顔に戻った彼は微笑んで言った
生き返った僕は彼に一礼して階段を駆け降りた
彼の言葉が頭から離れなかった
いつの間にか鼻血が止まっていた