ここは魔物が住まうと言う崖淵斜陽館でございます。
本日のお客様は『男』でございます。
黄昏にたたずむ男が一人、海で沈み行く夕日を見つめている。
周りにチラホラ居た釣り人も、次第に帰って行く。
男は黙って、ポケットから、ビールの小瓶を取り出すと一言。
「ウメェ〜もう一本」
?カチンコが打ち鳴らされた。
「はい、カッ〜〜〜ト」
CM監督の叫び声が響く。
「OKです、お疲れ様」
男は黙って腰を抜かした。
男は、ビールを飲み干したら、海に身投げをしに来ていたのだ。
声の方角を恐々見ると今度はテレビ中継が始まっていた。
「こちらが、噂の現場です、時折観光客が、幽霊を目撃しているとの事ですが。あっアソコに男性の方がビールの小瓶を持って座って居ますね。ちょっとよろしいですか」
アナウンサーがマイクを向けて声をかけた。
振り返った男の顔には目も鼻も眉毛も無い…のっぺら坊と言わんばかりの顔が…
男は一言、
「手術でこうなったんだよ。煩くて死ぬに死ねんわ」
一人暗く成った海を後にした。
如何でございましたでしょうか。
次のお客様は貴方かも知れません。
?