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聖人と手を繋いで歩いているあたしは、意外にも落ち着いていた―\r
―と言いたい所だけれど―\r
平静を装おうと、無理をしていた―\r
―と言うのが正直な所かもしれない―。
だって、これから初めて聖人の家へ行くんだもん―\r
緊張しない訳がなかった―。
『奈央の手。今日は珍しく暖かいんだな。』
聖人があたしに優しく微笑みかける―\r
『え?!そ、そうかな。』
『‥‥お前。手に汗かいてねぇ?!』
そう言って、あたしの顔を覗き込むから―\r
あたしの緊張が聖人にバレちゃった―。
『ぷっ‥‥‥めっちゃ かわい。』
聖人が呟く様に言った―。
あたしは、まさか聖人にそんなコト言われると思っていなかったから―\r
恥ずかしくなって、思わず顔を背けてしまった―。
『なぁ‥‥奈央ォ‥‥‥‥。』
『えっ?!』
『さっきは‥‥ごめんな。髪のコト、
全然似合わねぇなんて言ってさ。』
聖人は、鼻の頭を指先でポリポリ掻いていた―\r
『い、いやだ!!もう全然気にしてないよ!!』
本当は気にしてるケド‥‥‥。
『俺さ‥‥何て言っていいのか分からねぇけど、お前といると、なんか自分に素直になれるっていうか‥‥‥。』
『うん‥‥‥。』
今日の聖人は、何かいつもと違って見えた―\r
だって、普段の聖人はこんなコト言わないから―\r
『本当は‥‥あんまりめんこくて、正直‥‥まともに顔見れなくて‥‥‥。』
『う‥‥ん。‥うん。』
嬉しい!!
あたし、聖人に髪のコト言われた時、本当は、かなりショックだったから―\r
聖人は、それ以上は何も言わなかった―\r
あたし達は、しばらく無言のまま歩き続けた―。
あたし―\r
今日は久しぶりに、いつもと違う聖人を見た気がした―\r
それは、1-3のクラスメイト達や、ミズホさんにサトル君、
3-5の取り巻きのヒト達の前では決して見せない聖人の顔だったから―。