殺すとは―\r
誰を?
いや―\r
口に出さなくても答えは99%出ている。
それは―\r
『梅城会長を―です』
焦点のぐらつく太田カツヒロの瞳に向けて、エウフセラ=ナールマンはためらいもなく言い放った。
『ば―馬鹿言ってんじゃねえよ』
ガチャリ-
パニックにかられた手から熱線銃の入ったケースが絨毯に落ちて鈍い音をたてた。
『無理に決まってるだろ!?相手を誰だと思ってんだ!!』
太田カツヒロの蒼白な顔面は今まで以上の恐怖に引きつった。
だが―\r
『助かりたければ彼を殺しなさい』
副会長はそのケースを丁寧に拾い直し、会長卓に置いた。
『で―出来ないよ』
『殺しなさい』
『だから、出来ないって!!』
『殺すのです』
静かだが断固とした副会長の口調に、太田カツヒロは赤絨毯にへたりこんでしまった。
『よろしいですか?』
その哀れな姿に足音も立てずに近付いて、エウフセラ=ナールマンはしゃがみながら目線を合わせた。
『梅城会長の忠臣を演じなさい。そして自ら前線を志願するのです』
会長の真ん前にまで迫ったゴーグルはまたしても妖しい電子光を放ち―\r
『彼の信頼を得なさい。そして、我が校の生徒から犠牲を出すのです』
『ば―馬鹿な』
だが、悪魔のささやきは次第に会長の弱き心を捉え始める―\r
『その上で、梅城会長をお討ちなさい。我が校の犠牲者の仇を取り、彼の独裁を否定するのです』
『む―無理だ、無理無理』
脂汗の滝を赤絨毯に染み込ませながら、太田カツヒロは首をぐるんぐるん振り回したが―\r
彼の心は地獄からの誘惑を振り払い切れないままはまり始める―\r
『イジメ撲滅同盟も第三中学校も、所詮は梅城ケンヤの独裁体制。彼さえ撃てば一気に瓦解します』
『ほ―保証はないだろ?』
『勝算なら有ります―その上で貴方がリーダーになればよろしい。新たなる同盟の主として』
エウフセラ=ナールマンはゆっくりと立ち上がり―\r
太田カツヒロに手を差し出した。
それを握れば―\r
太田カツヒロはもう後には退けなくなる。
そう―\r
梅城ケンヤと同じ様に。
『まず梅城会長に2T学園を討ってもらいましょう―後顧の憂いが無くなれはそこで彼はもう用済み、葬り去るのです―我々の手で』