―そうだ
もう後には退けない。
結局自分は《外国》の力を借りてこの座に据えられた傀儡。
本来ならそれに見合う力量も資格もなかった筈だ。
騙されて夢を見させられて踊らされただけさ。
梅城ケンヤに―\r
そして―\r
利用されるだけ利用されて、邪魔になれば闇へと始末されるに違いないのも分かっているさ。
梅城ケンヤに―\r
だったら―\r
殺される前に牙を剥いてやろうじゃないか!!!
『くっくっくっ―ふっふふふ』
太田カツヒロは両手を赤絨毯に突いてうつ向きながら笑い始めた。
『ふふっ―あっはは、あ〜はっはっはっはっ、ひひひ―ひっひひ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ』
哄笑は狂笑に変わり、それはいつ果てるともなく会長室を満たしたが、その間、エウフセラ=ナールマンは仁王立ちのまま微動だにしなかった。
だが―\r
『そうだ―俺は既に女子生徒三人をあいつのいけにえにくれてやったんだ。今更元には戻れない。ろくな死に方も出来ないだろう』
うつ向きながらそうつぶやく太田カツヒロの両目にはこれまでにない光が爛々とともった。
冷たく危険なぎらぎらした輝きが―\r
『死ぬかヒーローを択ぶなら、俺はヒーローを択ぶ!こんな事で犬死にさせられてたまるか!!どうせ犬死にさせられるくらいならいっそ噛み殺してやるさ―』
力強く立ち上がり、太田カツヒロは副会長が再び差し出した手を自ら取った。
『ああ、そうだ。イジメ撲滅同盟は俺が引き継いでやるさ!梅城ケンヤの代わりに俺が同盟を支配する!!そうなればもう誰も俺に指図出来ない、逆らう事も出来ない!!そうだよな?エウフセラ=ナールマン』
恐るべき野心家と化した会長の手を握りながら、彼を陰謀にいざなったエウフセラ=ナールマンはただゴーグルに青い光を走らせるのみだった。
《処刑生徒会長第五話・終り》