記憶〜Memory2-1〜

嵯峨野 龍  2008-04-15投稿
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「ねぇ、そこの人。」
廊下を歩いていた下級生らしき生徒を呼び止める。
「えっ!?僕ですワッ!?」
顔を見られたとたんに驚かれる。
「おい、あの人…。」
「ああ、あいつ、可哀想に。きっと泣いて戻ってくるぜ…。」
周りの奴等が何か言っているが、気にしない。
「す、すみません。な、なんですか?」
「えっと、生徒会室探してるんだけど、どこにあるか教えてくれない?」
「せ、生徒会室でしたら、向かいの校舎の三階の一番奥にあります。」
きおつけの姿勢で答えてくれる後輩君。いい子だ。
「そうなのか、ありがとな。」
俺は礼を言って、生徒会室に走る。

俺が去ったあと。
「おい、大丈夫か!?」
「あ、ああ。」
「何された?」
「そ、それが…、なにも。生徒会室の場所を訊いただけだった。」
「なにぃ!?」
「し、しかも、ありがとうって…。」
「あの人が礼を?」
「天変地異だ!!」
「いや、これは俺たちを油断させる作戦だ!」
「いやいや、これは………。」
「いやいやいや、そうじゃなくて…………。」
こんな失礼極まりないやり取りがあったなんて、俺が知るよしもなかった。

「ふぅ、やっと見つけたぞ…。」
こんな探すなら、やっぱり燎につれてきてもらえばよかった…。
後悔したが、後の祭りである。心配する燎を用事があるなら、と言って帰らせたのは俺なんだし…。
ま、過ぎたことは仕方がない。そう思い直し、俺は生徒会室のドアを開けた。
「ど〜も〜。」
人にナメられないためには、初めの印象が大事だ。俺はそう思い、なるべく陽気に入った。
…これ以上怖がられるのはごめんだからな。
「はい。ど〜ぞ〜。」
同じく陽気な感じで返ってくる声。
生徒会室の真ん中に置かれている、大きく丸い机。その向こう側に、その声の主は居た。
俺は最初から、生徒会長はイヤ〜な感じのガリ勉野郎だと思っていた。それは、この部屋に入る前までも思っていた。なんせ、伝言だけで人をコキ使う。しかも、今日の呼び出しだって放課後に、放送で言ってきた。
だが…。
俺は、もう一度生徒会長を見た。
「この学校で〜、生徒会長をやらせてもらっている〜、丘苑 纏(おかその まとい)です〜。」
そこには、なんともほのぼのした感じのする女の子がいた。
丘苑纏と名乗った女の子は俺を見て、ほのぼのとこう言った。
「初めまして〜。確か、『生月釜田さん』。通り名は、『餅つき名人』でしたよね。」



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