混乱
二人は質素でつまらないサーカスをぼぅっと観ていた。
サーカスの後、そのまま小肥りの男に連れられ旅館に着いた。
二人は疲れていてすぐに眠りについた…。
そして…朝。
のはず。
だが昨日と変わらない黄色がかった空。太陽も確認できない。
黄色のドームに囲まれているよう。そして。
「やあ どうだい? 気分は」あのメタボ気味の男が相変わらず乾いた笑みで聞いてきた。
「なんか変だよな〜。いろいろと。」ヒカルがリリの方を向いて言った。リリは黙っている。
「変ですか」と男は遠くを見る目で言った。
「だいたい、なんで俺たちが遠くから来たってわかっ…」とヒカルは問答を打ち切られるほどの冷気を感じた。
男の顔以外は透明な氷に包まれていた。その氷漬けの姿に少なくともヒカルはエミリアのことを連想していた。
「…ここから出してよ!早く!」リリが声を荒げて言った。
ヒカルは状況を読み込めていない。
リリは顔こそ冷静だったが内心は焦っていることはヒカルから見てもわかった。
男は笑い、粉になり、顔の部分から空へと舞った。
黄色い空は、恐ろしいピエロの顔で敷き詰められていた。
ヒカルは混乱していた。リリも焦りを隠せずにいた。
「キミたちはここ住民になるんだよ」と男の声が不気味に響いた。