彼は、ラピス・サラサエルという少年はサラサエル(堕天使)の名のごとく、神ではなく大人たちに歯向かった。
歯向かった、というのは正確には違う。
彼はただ、物事の真実を唱えただけなのだ。
なのに大人たちは彼の言う事を信じず、否定した。
神を愚弄するなと叱りつけた。
本当に愚弄している者が誰かも判らずに、彼を拒絶した。
そして彼は、当たり前のように一人になった。
この世で生きていく為には、大人たちに従わなければいけない事など、聡明な彼には初めから判っていた。
しかし、彼はそれをしなかった。
自分の心は曲げてはいけないと知っていたから。
それに彼は寂しくなかった。
数年前に滅びた教会には、その当時死んだ神父がいたし、天使達も彼の相手をしてくれた。
もちろん、神も彼を見捨てなどしなかった。
だから、彼は寂しくなかった。
これが、彼の始まり。
そして、彼がサラサエル(神の使途)になった瞬間(とき)。