奈央と出会えたから。<130>

麻呂  2008-04-17投稿
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『別におかしいなんて言ってねぇだろ。』



その一言が、どんな表情で言ってるのか気になったけれど―\r


髪を染めてもらっているあたしには聖人の顔は見えなかった―\r



『だって‥‥聖人、いつもあたしに何にも話してくんないじゃん。

放課後‥3-5の教室で、サトル君と二人だけでバイクや車の話で盛り上がっちゃって。

あたし、もっと聖人のコト知りたいもん!!

聖人の好きなコト知りたいもん!!』





『‥‥‥‥‥。』



あたしの言葉に―\r



聖人は黙ってしまった―\r



でも―\r



あたしの髪を染める手だけは、器用に動いている―\r





『俺さ、バイクは無免で、じゃんじゃん乗りまくってるくせに、車は一度も運転した事がないんだ。
つい最近までは、人の運転する車にさえも乗りたくなかった。

正直、車なんて一生乗らなくていいって思ってた。』





『うん。』



あたしが頷く―\r





『じゃあ何故、今は乗ってるのかって思うだろ?!

思い出したんだ―\r

ソレを―

今の―\r

奈央の言葉で‥‥‥‥‥。』





『聖人‥‥‥。』



あたしは今―\r



聖人の心底の更に深い所に―\r



やっと手が届きそう気がしていた―\r





『母さんのコトが―\r
走り屋だった親父の運転する車の助手席に、いつも座っていた―\r

親父の車に乗るのが大好きだった母さんの―\r

その気持ちが急に知りたくなったんだよ‥‥‥‥‥。』





気のせいか―\r



聖人の声が少し震えていた様な―\r





あたしは聖人に、直ぐに返す言葉が見つからず―\r





髪を染めてもらう事だけに集中するしかなかった―\r



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