勇者
空、というより天井。 ピエロの顔がドーム状の天井に敷き詰められている。
真上のピエロの額に割れ目が走る。
割れ目が開く。
開いた先に見えるものは深緑。「ついさっきまで」いた森の色だった。
二人にはここが創られた空間ということが分かった。
そして二人は深緑の空に吸い込まれる。「またおいで」男の声が響きわたる。
気がつけば帰っていた。あの森に。目の前には大柄な剣を背負った男が立っていた。
二人は大体理解してきた。自分たちはいつの間にか異次元に入り込み、そして目の前の男に助けられた。と。
「あんた…もしかしてキルバァさん?」ヒカルが答えはわかっていたがあえて聞いた。
「久しぶり。とりあえず順を追って話そうか。」キルバァが相変わらずの優しい口調で話しはじめた。
「まず、僕は君たちの後を付けていた。僕の再出発は君たちに付いていくことだったんだよ。もちろん、君たちが酸つかいのハンターと闘っていたときも近くにいたんだ。」キルバァが続ける。
「いや、じゃあ助けてくれよ!」ヒカルがキレ気味に言った。
「色々こっちにも考えがあったんだよ。そしてこの森に入り込み、案の定君たちは異次元に引き込まれていったんだよ。」キルバァが半笑い気味に言った。
「なんで引き込まれた時すぐに助けてくれないんだよ!こっちはワケがわからない内に一日を過ごしたんだぞ!」ヒカルがキレる。元は自分たちの不覚なのだが。
「すぐに助けたよ。」キルバァがスッパリ答えた。
「え?じゃあ…」ヒカルがいいかけた時、「一日も過ごしてないのよ。錯覚よ。今思えば全く一日を過ごした実感がないもの。」リリが言った言葉は正確で簡明で、ヒカルも一瞬で理解できた。
異次元は色々な行き方、引き込まれ方があり、行き着く先もいくつかあり、二人が行ったのもその内の一つらしい。と二人はキルバァに聞いた。
キルバァを含む三人は森を抜けた。綺麗な星が空を賑わしていた。