「それで、何かわかったのかしら?」
起動しないものの、修理が完了し、あおかぜに積み込まれていく“天使”を見ながら、滝川は基地の整備主任の河島に尋ねた。
「わかったと言えばアレなんですがね」
主任は酔っ払った赤ら顔で答えた。
「・・・?」
「全くの新規設計ですねェ」
「新規?」
「月軍のWWのデータは可変式から水陸両用まで一通り把握してるんですがね、こいつはどれにも当て嵌まらないんだね、これが」
「それが?」
「派生機じゃないって事は製造スロットを一新しなきゃならねーもんです。まあ、簡単に言えば、『新しい方向に切り替える』か、『量産する気がない』って事でしょうな」
前者は考えづらい。現在の月軍WWは各国のWW性能を僅かながら上回っている。傑作機『ダークキャット』がその最たる例だ。切り替えた場合、それに未来性が無い時に取り返しがつかなくなる。
とすると、後者『量産する気が無い』…
「ま、そういう事ですな」
酒をあおって河島はフラフラと戻った。
あれ程の兵器が量産された暁には、間違いなく我が軍に勝ち目はないだろう。
そう思うと嬉しいニュースと言える。
だが、それは同時に不気味でもあった。