テレビ局の中に入った僕は、テレビ局のスタッフと思われる、ネームプレートを首から下げた若い女性に、オーディションが行われる予定の部屋へ案内された。
部屋の中へ入ってしまえば、僕の会社の会議室と何ら変わりがなく、
会議室用の長テーブルとパイプ椅子が綺麗に縦に並べられているといった、ごく普通の部屋だった。
『これ、簡単なアンケート用紙なのですが、御記入お願いします。後でスタッフが回収しに参ります。』
女性スタッフはそう言うと、僕に紙切れ一枚を手渡した。
僕は、まだちらほらとしか座っていない、中央よりやや後ろの席に適当に座った。
そして、女性スタッフからもらったアンケート用紙に記入する事にした。
アンケート?
あなたの好きなお笑い芸人(又はタレント)は誰ですか(幾つでも可)。
カリカリカリカリ―\r
小梅太夫、東京03、綾小路きみまろ、大泉洋、アンジャッシュ、タカアンドトシ、志村けん
アンケート?
あなたの好きなテレビ番組は何ですか(幾つでも可)
カリカリカリカリ―\r
エンタの神様、徹子の部屋、中学生日記、オーラの泉、NHKスペシャル、おにぎりあたためますか、ごくせん
アンケート?
あなたの好きな音楽のジャンルとアーティストは誰ですか(幾つでも可)
カリカリカリカリ―\r
演歌、民謡、詩吟、長唄、浪曲、ハードロック、北島三郎、村田英雄、三橋美智也、春日八郎、犬井ヒロシ、System Of A Down、メタリカ、W・A・S・P
アンケート?
あなたの好きな司会者は誰ですか(幾つでも可)。
カリカリカリカリ―\r
草野仁、黒柳徹子、福澤朗、徳光和夫
アンケート?
あなたの尊敬する人は誰ですか。
カリカリカリカリ―\r
三輪明宏
アンケート?
あなたは何故、このオーディションを受けようと思ったのですか。
カリカリカリカリ―\r
書類選考が通ったから。
よし。こんなもんでいいだろう。
自分で言うのも何だけど、こんな好感度抜群のアンケートの回答は、他に類を見ないかも。
我ながら上出来だと思った。
僕って天才かも。
今思えば、最初にポストに投函した履歴書も、このアンケート用紙の様に真面目に書けばよかった。
僕は逸る気持ちを抑えるのに必死だった。