遺書−私と彼女という現象−

あきは  2008-04-22投稿
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−第三話−
 『A』の言葉は私にはとても難解だ。
<自殺だけど他殺>
<生きていく方が辛いことがある>
今迄、正反対の言葉しか『A』からは聞いたことがなかった。
今目の前にいる『A』はやつれているわけでもなく、一見すると前と何ら変わりなく見えた。
「い、色々って一体何があったの?」
「大丈夫、貴方には全部話すから。」
『A』は穏やかにそう言うと私を見つめた。
「そうね…、最初は。」


私も『A』も東北のある県の小都市で産まれ、その傍の寒村で育った。『A』は、早く自立したがっていて高校を卒業すると、関東の国立の看護学校に入学した。卒業するとUターン就職で県立病院に勤め地方公務員になった。
仕事に慣れた頃、『A』の生活を変えたのはパソコンだった。元々機械には強い『A』はあっさりパソコンに馴染み、不規則な看護師生活の中でいつでも誰かと話せるネットに傾倒していった。
そして、そんな中で将来の夫になる男に会ってしまった。それからは毎日の様にその男と現実的ではない世界の会話に酔いしれていた。

「チャットでの会話は快楽の部屋と同じだった。だから、次は電話、次は直接会ったのよ。」
生々しい『A』の言葉に私は目眩をおぼえた。私の知らなかった『A』がそこにはいたのだ。
「会ってすぐにセックスして、彼と一緒にいたいと思ったわ。だから、仕事も辞めて傍に来たの。」
『A』はそこまで言って、ふぅと息をついた。そして寂し気な微笑を滲ませ言葉を零した。
「でも………、そこからが私の過ちだったんだと思う。」

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