その日、アイサは詩を聴きながら目を覚ました。
詩っていたのは彼だった。
ガラスの抜け落ちた天窓から冬の朝日が直に差し、ロザリオに反射して教会のあちこちに散らばっている。
その中で、彼はいつもの場所に立ち詩っていた。
―――神よ。
貴方を祈ろう。
貴方の為に、私の為に。
神よ。
貴方を讃えよう。
貴方の為に、あの子の為に。
神よ。
貴方を信じよう。
貴方の為に、世界の為に。―――\r
アイサがしばらく彼の声に浸っていると、彼は唐突に詩をやめ、アイサの方を振り向いた。
「おはよう。黒き姫」
「……おはよう。サラサエル」
『もっと彼の詩声を聴いていたかった』と、アイサは自分でも気付かないうちに望んでいた。