* * * * * *
『奈央。浴室は向こうだから、髪洗い流して来いよ。
俺ん家、シャンプードレッサーとかねぇからさ。
それと、ついでにシャワー浴びて来いよ。
ほら、これ‥着替え。俺のだから、ちょっとでけぇかもしれないけど。』
聖人は、あたしに自分のスウェットを手渡した。
『えっ?!/////』
『ば‥ばか!!何赤くなってんだよ。
変な事考えんなよな。』
聖人はそう言うと、あたしの髪を染めるのに使用した道具を片付け始めた。
『う‥ん。じゃあ、シャワーで髪洗い流して来るね。』
『タオルとか、そこに出しといたから。それ使えよ。』
『うん。ありがとう。』
―と言う訳で、あたしは浴室のシャワーを借りて、髪を洗い流した。
カラーリング剤が、髪を洗う時に跳ねたりするから、
聖人はシャワーを浴びて来いって言ったんだよね。
そんなの分かってるけど、
なんかドキドキした―。
シャワーを浴びながら―\r
あたしは、さっきの聖人の話を思いだしていた―\r
人間誰しも過去か、未来か、現在かの心の何処かに―\r
何か思う所があって―\r
それは人によって違っていて―\r
だからこそ、それはその人にとって“ただの悩み”などと、一言で済まされる様な事ではなく、とても重要な事であり―\r
ましてや他人に簡単に話せない事なら尚更であり―\r
ましてやそれを未来に持ち越そうとしているのなら―\r
いつか聞いた“これからの未来って、そんなに悪い事ばかりじゃないよね”って何処かの誰かが言ってた言葉が、やけにインチキっぽく思えたんだ―\r
あたしは浴室を出て、聖人から借りたタオルで髪と体を丁寧に拭いた―\r
そして―\r
聖人から借りたスウェットの上下を、その上から着込んだ―\r
かなり大きめの聖人のスウェットは―\r
とても柔らかな石鹸の香りと共に、
あたしの小さな体をすっぽりと包み込んだ―――\r