龍雅はロイが呼び寄せた軍用ヘリコプターで結奈の入院している病院へと足を運んだ。
そのヘリコプターには同時に重傷の負傷兵や救護兵が多数乗っていた。
病院の屋上のヘリポートに到着すると直ぐさま負傷者が運び出された。
意識を失っている者、激痛の余り大声をあげる者 、家族や恋人の名前を叫び泣きじゃくる者、そして志半ばにして息を引き取った者。
それらは全て担架によって白い巨塔の中に送り込まれて行った。
龍雅もその列の後に続いて中に入った。
龍雅はすでにこの病院の内部構造をある程度把握していた。
何故ならこの病院は先の大戦時に軍の最重要医療機関の一つに指定されており龍雅も度々この病院を訪れる機会があったからだ。
龍雅は一瞬立ち止まり案内板で目的の場所を確認するとすぐに歩を進めた。
三分程歩くと龍雅はある病室の前に立ち止まった。
ドア横の入院患者の名前を示す表示板には何も書かれていなかったが龍雅は迷う事なくドアを開いた。
そこには軍制服に身を包んだ女三人がベッドを取り囲んでいた。
その中の一人が龍雅の姿を見て腰のホルスターから素早く拳銃を取り出し、構えた。
女性兵「何者だ!?」
龍雅は素早く両手を上げた。
その際、龍雅は右手に『国家安全保障機構』の手帳を兵士らに示した。
龍雅「ここから一定時間、桜井結奈の調査権及び保護義務は『国家安全保障機構』の担当下に入る!!機密事項に触れる可能性があるため軍関係者の一時退席を要求する!!」
兵士達は互いに顔を見合わせると顔をしかめた。
そして全員が龍雅に敬礼しその場を退席した。
兵士達が去った病室には龍雅とただベッドに伏せて窓の外に視線を送るのみの結奈の姿があった。
結奈「…龍雅…」
龍雅は結奈の呼びかけの中に微かに啜り泣く声を聞いていた。