『ハハハハハハ。』
あたしが浴室からリビングを通り、聖人の部屋へ行きかけた時、
聖人の部屋から突然、笑い声が聞こえてきた。
聖人は、あたしに気を遣ってか、
ずっと部屋のドアを開けっ放しにしてくれていたから、
笑い声は、部屋中に響き渡った―\r
『聖人。どうしたの?!』
あたしは聖人から借りたスウェット姿だ。
『ハハハ‥。うん、昔のアルバム見てたらよ、なまらウケる写真がいっぱい出てきてさ。』
聖人ってば、目に涙まで浮かべて笑ってる。
さっきは感傷にひたってホロッときてたのに。
立ち直りが早いんだね。
聖人は隠してたつもりみたいだけど、
あたしは知ってるもん。
『面白い写真が見つかったの?』
古いアルバムを一ページずつ捲ってゆく聖人の横に、
思わずあたしも並んで座ったー
『ほら。これは俺の小学校の入学式の写真。』
『へぇ‥。かわい〜っっ。女の子みたいに色白で。あはは。何か、今の聖人からは、想像出来ないね。』
『おい。それ、どういう意味だよ!!
俺は生まれつき心臓に孔があいているのと、喘息持ちで、ずっと休みがちの病弱少年だったんだよな。
顔なんていつも青白くてよ。かなり、おとなしい少年だったな。』
おとなしい少年ー
アルバムの中にはー
今の聖人からは全く想像が出来ないー
幼き日々の、聖人がいたー
『赤ちゃんの時の写真は、神戸で撮ったものが多いね。』
『おう。さっき話した車の事故で、母さんが死んでから、直ぐに小樽に来たからな。』
聖人と聖人のお父さんはー
お母さんを車の事故で亡くしてから直ぐにー
小樽に移り住んだのだと言うー
それはー
聖人のお父さんが、聖人のお母さんとの思い出がいっぱい詰まった街‥“神戸”から離れる事でー
少しでも早く、辛いあの日のあの事故の事を、
忘れたかったからなんだってー