甘いワナ??

夢月  2008-04-24投稿
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入ってきたのは、黒いパンツに黒いジャケットの男性。

黒を基調とした服装で、軽く崩して着てはいてもだらしない感じではなく、ラフに着こなしている感じだった。


マスターは片眉を上げてそのお客を一瞥(いちべつ)したが、すぐにグラス磨きに戻った。


「お待たせ。」


彼、谷澤くんは私の向かいの席に座って言った。

テーブルに肩肘をつきながら、ニヤニヤと私を見つめる。


そんな彼の態度に少しむっとした。


「どうかしましたか。」

自分でも驚くくらい言葉が冷たく発せられたのがわかった。


「 うん?ホントに来て くれるなんて…ね。」

怯(ひる)まず笑いながら言う彼。

顔が赤くなるのを感じた。


『 冗談であんなこと言 ったの?
なのに、私はバカみ たいに信じて…』


彼に踊らされた自分が恥ずかしかった。


――でも


恥ずかしさを感じる反面、沸々(ふつふつ)と怒りがこみ上げてきた。


『 あんなに悩んだのに からかっただけ?
  バカにして…!』


私は伝票を手に取ると、すぐに席を立った。


けれど…

次の瞬間、私は左手を引かれて、元の席に戻っていた。


彼は左手を掴んだまま笑って言った。


「 冗談だって。本気に した?
  怒った顔も可愛いね 。」


彼の言葉に一瞬言葉を失った。



――可愛いい?


――私が?



私は彼の顔をまじまじと 見た。


「信じられない?」


信じられない。


口には出さなかったけれど、顔に出ていたらしい。


彼は苦笑しながら立ち上がった。


「じゃあ、行こうか。」

そう言いながら、私の手から伝票を抜き取って、レジに向かう。


彼に紅茶代を支払ってもらうのは気が進まなかった。


だから、彼から伝票を奪い返そうとした。

けれど、その手はあっさりと空を掴み、
逆に手を握られてしまった。


弘人くんとは違う男性の手を感じて、思わずドキッとした。

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