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この充たされる進行と同じぐらい、無職の一日は速い。職を無くしてからもう10ヶ月が過ぎようとしていた。
新聞を広げれば「職員削減」の記事が、紙面の端に書かれていた。目につきにくい位置。しかし何故かそんな文字ばかりが目に入る。
仲間が増えるという嬉しさと、他人の不幸を笑う偏屈な感情が僕を支配する。我を顧みたら、笑っていられる状況ではないことはわかっていた。
しかし、誰しもそんな気持ちはあるのではないか。ただ、大半の人間はそんな感情を表に出さずほくそ笑む。僕にはそれが出来なかった。
笑いたいときは笑う、怒りたいときは怒る。喜怒哀楽は人間として当然なのにもかかわらず、それを隠すなんて寧ろ不自然だと僕は思う。
そんなんだから、無職になったんだろう。