僕は驚きのあまりしばらくその場に立ち尽くしていた。
その女性は両手が塞がっている為、エントランスのドアを開けれずに四苦八苦していた。
少し息を吸い込み、気持ちを落ち着かせて彼女の方へ向かった。
彼女の後ろを通りすぎ、彼女の荷物を一つスッと持ち、エントランスのドアを開ける。
「あぁ。どうもありがとう!助かりました。」
彼女は僕を見て微笑みながら言った。
「いいえ。どうぞ。」
平静を装いながら答え、彼女が中に入るまでドアを押さえていた。
「エレベーター迄お持ちしますよ。」
振り向いた彼女に言った
「本当にありがとう。」
綺麗なハイヒールを鳴らしながら彼女はエレベーターへ向かった。
「もう平気です。後は独りでも運べます。本当にありがとう。」
僕から荷物を受け取ると彼女はエレベーターへ乗り込んだ。
僕の部屋の階で彼女もおり、何だか紙を取り出して見ていた。
…誰かの知り合いかな?
僕は自分の部屋の前に立ち、部屋の鍵を探していた。
すると、僕の部屋のもう一つのドアの前に彼女は立ち、僕に話しかけた。
「あら?お隣りだったのね?初めまして。私、サクラ・ヨシノよ。今日隣に越してきたの!後でルームメイトにあなたを紹介して貰いますね。友達が見つけたアパートだからまだ私ルームメイトに会った事ないんだけどね…。あはは。」
笑いながら彼女は部屋の鍵を開け、中に入って行った。
意味がわからない。
彼女は僕のアパートの鍵を持ってて僕の部屋の空き部屋に入って行った。
ルームメイトに会った事がない…
友達が見つけたアパート
今日越してくるのは昨日会ったジェイのはずだ。
徹夜明けで頭が回らないのか…?
とにかく僕はポケットから鍵を取り出し、部屋へ入った。
「わぁ…!素敵!ジェイの言った通りだわ…!景色も部屋も最高!」
私はベットルームから見えるマンハッタンの景色に見取れていた。
新しい何かが始まる予感がしていた。