つい女につられてわめいてしまった。
おかげで女は
え?
と動きを止めた。
「何?死んだですって?」
女はその言葉と共におりくずれた。
気を失っている。
「あ〜あ、これだから生身の人間は・・。」
あ・・、あ、い、愛!
女が飛び起きるとそこは、近くの公園のベンチだった。平日の真っ昼間とあって人通りがない。
「ここなら、ゆっくり話せると思ってね。」
振り返ると、さっきの男が立っていた。慌てて立ち上がろうとするが、
ぐら
と目の前が歪んでまた
すとん
と座ってしまう。
無理もない
「このところ、ずっと食べていないのだろう?倒れて当たり前だ。」
どうして、それを?
そりゃ、
「・・・そのやつれ具合、誰が見てもそう思うさ。」
「・・フフ、そうよね、ねぇ、あの子は?」
男は赤ん坊を抱いていなかった。かわりに、小さなビニール袋をさげている。
さぁ、これを。
「食べなさい。そのままではいけない、君まで死んでしまう。」
あ、ありがとう。
女は受け取り、食べてみた。
何とも甘い香りと共に、いいようもない程の味が口いっぱいに広がった。
ん、お・美味しい。
だろう?
「中国にいる知り合いに、特別に作ってもらった。」
「っ。・・・、う嘘?!」
そう思うかい?
うん。
男は
ぼりぼり
頭をかいた。
ああ、そう。
「俺って、そんな風にしか見えないのかねぇ。」
あ、ごめんなさい。
いや、いいんだ。
「それより、君に協力して貰いたい事があるんだ。」
ここに、
「君の子供の魂なんだが、今はここで眠ってる。」
え?どこ?
いや、
「一応今は見えないようにしているからね。」
ああ。そうなの。
「ちょっと言いづらいんだが、君の子供、死の間際に餓えていたせいで、魂になってからも飢餓感がつよい。」
で、・・・。
「・・。」
何?何でも言って。
「あの子の為になる事なんでしょう?何でもするわ。」
ああ、
「飢餓感が強すぎると、転生できずに幽鬼になって、永遠とこの世をさ迷う事になる。」
だから
「君の、・・その、ぼ、母乳・・を分けてほしいんだ。」
何だ。そんな事。
「お安い御用よ。・・でも、どうやって?」
これに
「入れてくれれば、いい。」
男は空中から空色の瓶を取り出した。
女は不思議そうにその瓶を眺め、
ねぇ、
「あの子の顔、見せてくれない?」