ひとを殺したい 5

ゆうこ  2008-04-26投稿
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始めから愚かだったのは僕。


彼女が泡を吹いたとき、怖くなったのは僕。


眠れない夜に、わからない不安と苛立ちに振り回されていたのは僕。


誰でもない。
「孤独」を抱えたのは僕のせい。

真っすぐで、力強い彼女の目が、心が、僕に教えてくれた。


泣きながら笑う僕に、彼女はキョトン、としてそれから言った。




お兄さんのことは言わないから、安心して。


いいよ。僕は別に…



ううん。帰れるなら私はいいの。お兄さん、ありがとう。
わかってくれて、ありがとう。



さよなら。



お兄さん、もうこんな事しちゃダメだよ?
じゃあさようなら。
お腹ペコペコ。






走って消えていく彼女の後ろ姿に向かって、僕はまだ笑っていた。







ねえ、聞いた?



何を?



ほら、行方不明になってた女の子、見つかったのよ。



……うん。



開きっぱなしになってたマンホールに落ちて、まる二日気を失っていたんですって。
信じられる?



………ふぅん…。




良かったわよね?
落ちたのがあなただったらと思うと…本当に…いいえ、とにかく、見つかって良かったわ。



………うん。



あら?どうしたの…泣いてるの?






ううん。






ねぇ、お母さん。







なあに?




僕はまだ八歳だよね?



そうよ?






まだ…間に合うかな?





そう言って、涙目になった息子の肩を、私は抱きました。
何故かそうするのが相応しい気がして。
この子は何か変わったのかもしれない、と思ったのです。









以上が、僕の過去だよ。
いつか誰かに伝えたいと思っていた。



あの頃の僕は、自分のなかの何かに押し潰されて息が出来なかった。

けれど彼女との出会いで…僕は気付いた。


孤独は、人を傷つけることで癒されたりは絶対にしないと。



だから、僕はこれを書く…彼女も協力してくれたよ。


二十歳になった彼女は、今も真っすぐ、自分の夢に向かっている。


僕は君と結婚したい。

でもこの真実を受け入れてくれるかな?


答えは急がないよ。








………そうか……。










ありがとう。
















人を殺すことは……

自分の心をも殺してしまう。


気づかせてくれてありがとう。



あの日の君へ。



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