ふと、思う。
「数学どーだった?」やっと試験も終わり、ようやく寛げると、机に突っ伏してると、隣の席の住人が話しかけてきた。
「あー・・・。」
返答に悩む。
あまり話した事のない奴なのだ。
ずっと黙っている俺を、不思議そうにソイツは見つめる。
何か話さなかゃな・・・・。
「まぁ・・・そこそこ、かな?
そちらさんは?」
数秒たって、ようやくの変化がコレ。
俺にもう少し、回転の早い頭があれば。
「そっか。俺は、自分で言うのもあれだけど、結構できた方」
爽やかな笑顔でソイツは返す。
い、イヤミな奴・・・。
俺はいじけて、窓の方を見る。
曇一つない良い天気だった。
ふとソイツが気になって、隣の席に目を移した。
「??」
絵を書いている。
俺はなるべく自然を装って、バレぬように奴の手元を除きこんだ。
石ころだった。
何故こんなものを書いているのだろう?
「石ころって可哀想だよね。」
「へっ!!?」
突然、話しかけられた驚きによって、俺は椅子からころげ落ちそうになった。
「生きてるのに、邪険にされてる。
生きてるのにね。」
顔は笑っているのに、どこか悲しくみえた。
その表情は一体、何処からきているのか。
たった16年しか生きていない俺にとって、難題以外何者でもなかった。
ただ、俺が思った事は一つ。
「・・・今度はさ、空、書いてくんね?
曇一つない空。」
そう言った瞬間、僅かに笑顔が揺らいだ気がした。
「――――・・・うん。今度ね。」
ふと、思った。
俺達は石ころなんだよ、結局は。
コロコロ転がって、割れる時を待つ。
何時、何があるかなんて解らない。
だから必死なんだ。
ひたむきなんだ。
あぁ、あの空。
石ころが届くはずもない空。
晴れた日、奴は青色の絵の具を、思いきりぶちまけた。
それは、見た事のない空の色だった。
でも、
「綺麗だなー」
「書いてみなよ。きっと巧く書ける」
「そうか?あ、今度はさ、俺の野球やってる絵書いてくんね?」
「えー。面倒くさ。」
コロコロコロコロ。
空になんて届かないけど。
石ころごとき。
でも、花になら触れられるから。
届くよ。
コロコロコロコロ。
どこまでも転がっていくんだろうな。
俺達ってきっと。