石ころ、

 2006-05-06投稿
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ふと、思う。


「数学どーだった?」やっと試験も終わり、ようやく寛げると、机に突っ伏してると、隣の席の住人が話しかけてきた。

「あー・・・。」
返答に悩む。
あまり話した事のない奴なのだ。

ずっと黙っている俺を、不思議そうにソイツは見つめる。

何か話さなかゃな・・・・。

「まぁ・・・そこそこ、かな?
そちらさんは?」

数秒たって、ようやくの変化がコレ。
俺にもう少し、回転の早い頭があれば。

「そっか。俺は、自分で言うのもあれだけど、結構できた方」
爽やかな笑顔でソイツは返す。
い、イヤミな奴・・・。

俺はいじけて、窓の方を見る。
曇一つない良い天気だった。

ふとソイツが気になって、隣の席に目を移した。

「??」

絵を書いている。

俺はなるべく自然を装って、バレぬように奴の手元を除きこんだ。
石ころだった。

何故こんなものを書いているのだろう?

「石ころって可哀想だよね。」
「へっ!!?」
突然、話しかけられた驚きによって、俺は椅子からころげ落ちそうになった。

「生きてるのに、邪険にされてる。
生きてるのにね。」

顔は笑っているのに、どこか悲しくみえた。
その表情は一体、何処からきているのか。

たった16年しか生きていない俺にとって、難題以外何者でもなかった。

ただ、俺が思った事は一つ。

「・・・今度はさ、空、書いてくんね?
曇一つない空。」

そう言った瞬間、僅かに笑顔が揺らいだ気がした。

「――――・・・うん。今度ね。」



ふと、思った。


俺達は石ころなんだよ、結局は。

コロコロ転がって、割れる時を待つ。

何時、何があるかなんて解らない。

だから必死なんだ。
ひたむきなんだ。



あぁ、あの空。

石ころが届くはずもない空。





晴れた日、奴は青色の絵の具を、思いきりぶちまけた。

それは、見た事のない空の色だった。

でも、


「綺麗だなー」

「書いてみなよ。きっと巧く書ける」

「そうか?あ、今度はさ、俺の野球やってる絵書いてくんね?」

「えー。面倒くさ。」




コロコロコロコロ。

空になんて届かないけど。

石ころごとき。

でも、花になら触れられるから。

届くよ。

コロコロコロコロ。

どこまでも転がっていくんだろうな。


俺達ってきっと。

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