「朝ご飯にしようか」
彼は楽しそうに言うと、アイサに手を伸ばした。
「うん………」
アイサは彼の手を取る。と同時に、どこに食物があるのだろうと周囲を見渡した。
しかし、教会の中にあるのは古びた燭台や朽ちかけた長椅子だけ。
「………買い物に行くの?」
「行くわけないじゃないか」
彼は当たり前のように言った。
それが、彼の当たり前だから。
「じゃあどうするの?」
アイサの問い掛けに、彼は小さく笑うと
「扉を開けてごらん」
囁くように促した。
アイサは戸惑いながらも、重たい教会の扉を開けた。
「―――えっ?」
扉の外にあったのは、たくさんの食物、花、ロザリオ、コイン……
アイサは思わず彼を仰ぎ見た。
「これは…………?」
一体どういう事?
彼は小さく笑みを浮かべた。
アイサには見えないくらい、小さな小さなほほ笑みを。