「町の人たちはね、この教会に天使が住んでるって信じてるんだ」
くすくすと――楽しそうに、笑いながら。
「なんて愚かなんだろうね。人間って」
嘲るように、謳いながら。
「天使が人間の造ったものに住むわけ無いのに」
軽蔑するように、囁いた。
「…………違うわ」
そんな彼に気付いているかいないのか、アイサは声を上げた。
「…何が違うの?黒き姫」
静かに彼は問い掛けた。
この少女(人間)はどれだけ世界を判っているのか。と、試すように。
「………町の人たちが言う天使は、貴方の言う天使じゃないわ」
「天使は貴方の事よ。サラサエル」
―――教会に住むはサラサエル(神の使途)。
神は全てを知っている。
天使は人間が判らない。
使途は人心が判らない。
人は人を知っている。