「…レーダ機ならびカイト機は0214時に西へ迂回、ヌーダ領空へ展開。その後作戦プランAへ移行されたし。」
エンジン音をカキ消すように作戦本部から暗号通信が入った。真夏の太陽がただでさえ暑いコックピットを照っている…「ガガッ…カイト機了解。」
ここで自分は嫌だなんて言う奴がいるんだろうか…オレら軍人には大概イエスしかない。
「レーダ了解。」
「聞いたかカイト。これより本部との暗号通信を断つ。以降、通信チャンネルは0300番とする。どうぞ。」
「カイト了解。」
カイトの返事を聞き、右手側にあるマイクロキーボードを叩いた。
本部との通信回路を遮断し、カイト機との有線暗号通信のための回線を立ち上げた。
「こちらレーダ。応答されたし。」
しばらくの沈黙。
「こちらカイト。音声通信の開通を確認。…まだ時間ありますね、作戦時間まで。」
「する事はねぇぞ。後三分あるが、善は急げだ。ヌーダ領空へ向かうぞ。高度は1200フィートだ。」
「…了解…はぁ」
操縦蛇を左へ傾ける。ゆっくり機体が左へ傾くのが分かる。