−第九話−
独り疲弊しきった『A』は、<鬱病>になり、メンヘラーになった。そして過剰な薬の投与と自殺未遂。医師の責任転嫁に打ちのめされ実家に軟禁状態にされる事になった。
初めの1週間は断薬による禁断症状で離人症状と目眩、嘔吐、幻覚と幻聴の波に翻弄され死んだほうがマシだと叫び続けていた。やがて実家から一番近い医大の精神科にかかり、やっと『A』は『A』らしさを取り戻し始めた。
それからの3ヶ月は終日血縁者の監視下で『A』は闘病することになり、それは『A』にも家族にも辛い時期となった。
そして桜の咲く頃、男が迎えに来ると『A』は、もう一度だけやり直してみようと戻ることに決めた。
「何か変わるだろう、もう同じ事は繰り返さないだろう。そう思ったのよ。」
それを『A』は寂しそうに呟いた。
『A』は仕事に戻ろうとした。しかし、上司の拒否があって結局退職することになった。
そして哀しい事に男は仕事は始めたが直ぐ辞め、他の女との連絡も変わらず続けていた。
『A』はそこまで話すと、大きな吐息をもらした。
「わ、別れなよ。」
私の言葉に『A』は眼を伏せた。
「また、それでも愛してるの。だからこそ」
『A』は私に向かい、狂喜じみた眼で微笑むと言葉を続けた。
「だからこそ、尚更憎いし、ただで済ますつもりもないのよ。」