季節は春
小学三年生の頃………
ゆずゆ
「ねぇねぇ見てあれ。桜だよ。」
桜並木の通りでゆずゆははしゃぎまわり手を降っている。
和樹
「待ってよゆずゆ。」
ゆずゆ
「ねぇ桜って、きれいなのにすぐに散っちゃうよね…。」
桜を見上げ悲しそうな顔をするゆずゆに和樹はいう。
和樹
「大丈夫だよ。また春になれば、桜は咲くよ。春になれば生まれ変わって新しい自分になれるんだ。」
ゆずゆ
「変わっちゃうの。今の自分でいたいと思わないの?自分らしく生きちゃいけないの?」
和樹
「でも、変わっちゃうんだよ。」
ゆずゆ
「和樹は変わらないでいてくれる?」
和樹
「うん、いるよ。約束する。」
ゆずゆ
「本当?」
和樹
「本当。」
ゆずゆ
「本当に本当?」
和樹
「本当に本当。」
ゆずゆ
「指きり。」
ゆずゆは小指を差し出す。
和樹は小指をきゅっと結ぶ。
和樹
「ん。」
ゆずゆ
「指きりげんまん嘘ついたら針千本飲ます、指きった。」
和樹はゆずゆの今にもあふれてこぼれそうな涙を優しく拭き取る。
和樹
「もぅ、涙もろいんだから。」
和樹はくすくすと笑う。
ゆずゆ
「いいもん。」
和樹
「いこ。下校の途中にこんなとこにいたら先生に怒られちゃう。」
和樹はゆずゆの手をとり歩く。
遠い昔の思い出………
もうこんな関係にはなれないかもしれない。
……………続く