快楽の代償〜出会い〜

ゆうこ  2008-04-29投稿
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その出会いはいたって簡単だった。

携帯の
「♪出会いたいなら…ラブピース♪」という宣伝文句を間にうけて無料登録したサイト。

そこで彼女に出会った。既婚者である私に、同じく既婚者である彼女…。つまり「大人の割り切った関係」というやつだ。
本当は会うところまでいけるとは思っていなかった。いや、期待はしていたが…メールの上での恋愛ゲームにのめり込んでいたのだ。

だが、彼女…千香は違った。
千香は積極的に私に会いたがり、自ら写メを送ってきた。

そこには、どこか悲しげな瞳の華奢な女性がこちらを見つめていた。
美しい、というわけではなかったが、そのそこはかとない暗さが…妙に色っぽい。

倉田さんはとても素敵ですね、大人っぽくて。

彼女の言葉にたわいなく気持ちを動かされた私は…妻を裏切る事を決めたのだ。


当日、私は多少早く待ち合わせ場所の駅に着き、彼女を待った。

しばらくして、恥ずかしそうに微笑みながら千香は来た。

当然、写真で見るよりずっと生き生きとしていて…私は胸の高鳴りを感じた。恋をした、とかそういう純粋な気持ちではなく、これからするであろう大人の行為に対しての期待に他ならない。

「実は、僕…君はサクラなんじゃないかって思っていたよ」

千香は嫌だ、と笑って熱っぽい目で私を見上げ

「行きましょう」
と掠れ気味に囁いた。



私たちは自己紹介もそこそこに、求めあった。

刹那の情熱。

一瞬の官能と快楽。

私はこれで終わりだ、と思っていた。
二回目、彼女を上に乗せ激しく突き上げながら、愚かにもそう考えていた

残業と偽り、罪悪感を背中にしょって、私は帰宅した。
入念に乾かした髪。シャンプーもボディーソープも使わなかった。
ばれる筈はない。


案の上、妻は疑いもせず大変だったわね、と笑顔で私を向かえた。
六歳になる息子、良太もゲームを一旦やめて
お帰りなさい、と元気に声をかけてくる。

つい一時間前の爛れた空気が嘘のような、正常な空間に、自分勝手な欲情が浄化されたような気さえする。
それでいて、頭の片隅には蜘蛛の巣のように千香の痴態がチラついていたのも事実で…。


私は冷めない興奮を妻にぶつけた。


自分にこんな体力があったことに驚き……疲れきった身体を引きずり、寝入った妻をそのままにして冷蔵庫に向かった。

真っ暗闇のリビングを突っ切り、冷え切ったエビアンを唇に押し当てた、その時……





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