遺書−私と彼女という現象−

あきは  2008-04-30投稿
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本文−第十話−
 『A』は、狂気じみた眼で微笑み言った。
「愛してるからこそ、尚更憎いし、ただですますつもりはない。」と。

「で、でも当て付けで死ぬなんて………。」
私の言葉に『A』は自嘲気味に眼を伏せた。私の言葉に痛いところを突かれた様だ。
「でも、私にはもう道が見えないのよ。」
「道………?」
「私が生きていくために支えになるものもない。」
「支え………?」
訳が分からなかったが、ただ『A』の絶望があまりにも深いことだけは理解出来た。

「生きていく事は素晴らしいけれど辛い事でもあるわ。私はそれに負けたの。」
『A』は静かに私を見つめた。そこに浮かぶ狂気は穏やかだが、酷く根深い不気味な気配を持っていた。
「死ぬための準備を毎日少しずつしているの。薬をため……、縄を買い、身の回りを整理する。」
『A』は静かに続ける。しかし、穏やかな言葉が逆に私を恐怖で覆っていく。
「死体は最初に彼に見つけさせたい。でも、それだけよ。」
それだけとはどういう意味なのだろう。私は息を飲んで『A』を見つめていた……。



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