暗くて湿った裏路地の隅っこで生まれた俺は猫
親は産んだ瞬間に死んだ
俺の体は黒い
人は俺が横切る度に「不吉だ」とか「きゃっ!」とか言われる
「黒くてキモーイ!ゴキブリみたいな色だね!」
「ほんと!早く死ねば良いのにさ!」
シネバイイ
オレガ?
ナニヲシタンダ?
オレハワルクナイ
ワルクナイ
ワルクナイ
ドンッ!という鈍い音が聞こえた
体が痛い
どうやら車にぶつかったらしい
「いてぇ…」
声も出せないのに言った
でも生きてる まだ
生きてる
なんでだよ
いっその事 コロシテクレ この世に俺は必要ないんだ
ヒツヨウナイ…
暖かい…
誰…?
「あ…起きた…?」
女の子がいた
俺に何をする気だ!
離せ!
ハナセ!
ハナセ…
鳥のさえずりが空に轟き、太陽が空を遊泳するちぎれ雲を照らす
今見える光景は俺が知る世界と違かった
ここは…?
「起きた?」
「元気無いね…どうしたの?」
「傷が痛む?」
なんだよ
優しくすんなよ
涙…
出ちまうよ…
「あ…泣いてる…」
……
「そっか…あなたも私と同じで寂しかったんだね…。」
彼女が抱きしめてきた
少し痩せ気味の体で体が痛い、でも…暖かい…
まるでお腹の中にいるみたいだ
俺…
「あなたは…私の大切な家族…これからも…ずっと…。」
俺は彼女と一緒に過ごした、風呂も入った
彼女は俺と居るだけで幸せそうだった
俺も幸せだった
でもある日散歩から帰ると彼女が血まみれで横たわっていた
「あぁ…お帰り…」
枯れた声
なんで?
「ごめんね…私…最後まで私…あなたと…いられなかった…。」
やめろよ
「でもあなたは生きて…」
「あなたは私の記憶…思い出…」
ヤメロ
「家族…」
オレは
あんたの
思い出
家族
記憶
俺は
彼女の記憶を
背負い
生きる
俺が生きる理由は
彼女の為…
ワカラナイ
でも
彼女といた日々は
シッテイル