「シケた面してんなぁ。」
(アキラ・・・)
「誰かが困るってんなら、俺はやるぜ。」
(アキラ・・・!)
「安易でも、決断したんだ、俺。」
「アキラ!!」
龍一は叫びながら目を開けた。白い天井が見える。
「りゅう!よかった・・・気が付いたのね・・・。」母の声がする。
「う・・・」
龍一は痛む右腕をかばいながら、上半身を起き上がらせた。
「無理しないで・・・怪我してるのよ・・・。」
母は龍一を気遣った。
辺りを見回す。どうやらここは病院のようだ。左腕に点滴が射たれている。ベッドの横にある椅子に、母は座っていた。
「俺は・・・」
痛む頭で、今の状況を把握しようとする。
「りゅう、何があったの?学校の近くで大怪我して病院に運ばれるなんて・・・」
母は心配した表情で質問した。しかし、龍一は黙りこくったまま何も答えなかった。
「一緒にいたはずのアキラ君は行方不明だってゆうし・・・。」
(そうだ・・・アキラ・・・)
アキラの事を思いだす。悲しみがまた身を包み、泣きたくなる。しかし、なぜか涙がでない。
「答えなさいよ、りゅう・・・」
「・・・・・・」
龍一は依然、黙ったままだった。
「あなた寝ていたにもかかわらず、アキラ君の名前を呼びながら泣いてたわ・・・そう、ずっと。」
龍一は、涙で脱水症状を起こしていた。