凛の光 [夏]

朝倉令  2006-05-07投稿
閲覧数[730] 良い投票[0] 悪い投票[0]



「わりィ、夕べバイクいかれちゃってさァ。 今日はイサオの車にしようや」


「お? 別に構わないよ、俺は。 座れるだけ楽でいいかもな」



遊び仲間の木島聡が、野口功の愛車で現れた。


明石健介は乗せてもらう立場にあるため、特に異存はない。



「バイクってさァ、走ってりゃ涼しいけど信号で停まった時なんか、ヤローにしがみついてると悲しいよな ……殊に夏場は」



「……俺も全く同感〜。  あ〜あ、出来れば女の子にしがみつかれてーよ」



揃いもそろって女っ気ナシの三人組であったが、そのうち深紅の物体が高速で近づいて来たのに気づいた。


「おい、かなり飛ばしてるみたい‥」


クワアアァ――ッ!!


ウワンッ!クオォー………


健介が喋りかけた時、超高回転のエンジン音が窓から飛び込んで、続く声をかき消していった。



「何よ、アレ?……」


「真っ赤なバイク…だったよな?」




そこで、それまで黙っていた野口功が硬い表情でボソッと言う。



「出たな、化け物が……
 あれはドゥカッティ・デスモ・クワトロってバイクだよ。
城崎凛(りん)って女のマシンだ」


「え?女かよ!」



健介と聡は、異口同音に意外な、と言いたげな声を上げる。






「あれ?さっきのドゥカッティが停まってるぞ……」


いち早く車を降りた健介が深紅のマシンに向かっていく。



そこにはヘルメットをシートに置いて、ティーカップを手にした娘が寛いでいる。



「ちょ、ちょっと健ちゃん……」


「イサオ、どしたん?」



かなり慌てた様子の野口功に、聡が問い掛ける。



「いや、言い忘れたんだけど、『化け物』はバイクじゃなくて、女の方なんだ」

「何だってェ?」






(どっかで見た顔だよなぁ   …………あ!)



そこで悠然とティータイムを決め込んでいたのは、春先に見かけた『喧嘩の邪魔』をしていた、あのユニークな娘に間違いなかった。


こちらに気づいた娘、城崎凛は健介にニッコリほほ笑みかけてくる。



「バイクがお好きなんですか?」


「え、あの……」



健介は一瞬返事に困った。





つづく

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 朝倉令 」さんの小説

もっと見る

その他の新着小説

もっと見る

[PR]
小倉優子プロデユース
画期的なパウダー♪


▲ページトップ