――――ぴちゃん
蛇口から一滴のしずくが落ちた。
物音に敏感になっていた俺は、悲鳴を上げそうになり、慌てて両手で口をふさいだ。 …うぅ……かっこわる…。
俺は柳川遥架(やながわはるか)。一応いっておくが俺は男だ。
こんな名前だからよく女と間違えられるが、外見は至って普通の男子。髪が少しつんつんしているのが悩みだ。
海清中学校の一年生になって約一か月がたつ。
そして俺は今、その海清中の校舎のある一角で、蛇口から旅立ったしずくの着地音にビビっていたのだ。
何故それだけでこんなにビビるのか。
それは――――
今が夜中の十二時過ぎだからだ。
昼間の学校とは違ってやけに音が響く。
それに、いつもはない心細さがある。
なんで俺がこんな時間に学校にいるんだと思う?
――――前の日の昼休み。
俺達の教室に、変なウワサが流れてきたのだ。
「学校に幽霊が出るんだって」
はぁ?幽霊だぁ? 馬鹿馬鹿しい。
俺は信じなかった。
だが、その時の俺は知らなかった。
俺の平凡な学校生活が終わりを迎えることなど。
『門』ノ弐 へ続く