昔の思い出2

もね  2008-05-01投稿
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二両編成程の手動の扉は重く母親にガラガラと開けてもらうと窓際に兄と陣取った。
また延々と海と山が続く。暗くなり寂しげな景色に眠くなる頃、終点の一つ前の駅が祖父と祖母の住む最寄りの駅だった。
起伏に富むリアス式の海岸が急に途切れ、潟に竹で組まれた牡蠣養殖の仕掛けが水平線まで広がる雄大な景色を眼前にその小さな小さな無人駅はあった。
駅に降り立つと海にほんのり夕日の色が残り、空には普段目にする事がない無数の星が瞬き始めていた。
女川の町へと続く細い車道を渡り、急な砂利道を息を切らせて登り続けた。途中幾つもの石垣があり、鮑の綺麗な貝殻などが転がっていた。石垣に棒を突っ込んでは母に蛇が出るから止めろと叱られた。
坂を登ってどの位歩いたか、民家も見えない山奥に温かい灯りの漏れる古い家があり、祖父と祖母の住む家にやっと着いたのだった。



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