風が吹き荒れる。
大量の風。
外は台風だ。
しかし、普通の台風とは違う。
いや、これは台風とは呼べない。
そう、これは暴風だ。
「助けてくれ〜!」
男が大声をあげている。
しかし、暴風は男の声をかきけしてゆく。
どんなに大声をあげようが無駄。
どんなに助けを求めても無駄。
「ひ〜!」
暴風がどんどん男、砂原鉄多(さはらてった)に近付いてくる。
「わかった!どんな情報でも話す!だから、助けて!」
その言葉に、暴風は歩みを止める。
そして、暴風が話しかけてきた。
いや、正確には暴風の中心に人がいる。
そいつが話したのだ。
「森羅(しんら)という男を知っているか?」
「森羅?知らない!本当に知らない!」
鉄多の声は震えている。嘘はついていないようだ。
「そうか。ならお前にようはない。」
その瞬間、暴風は、その威力を弱めていった。
そして、風がやんだとき一人の長身の男が現われた。
そう、この暴風は男がつくりだしたものだったのだ。
人間が機械も、なにも使わずに風をつくりだせるわけがない。
いや、正確には違う。
本人が触れる風、そよ風は走るなどの行為でつくれる。
だが、暴風なんてつくりだすことはできない。
普通なら。
そう、この男は普通ではないのだ。
しかし、鉄多にもたいした驚きはない。
普通でない事象を見た人間のリアクションではない。
恐怖で気でも狂ったんだろうか。
男は、鉄多に背を向け歩きだす。
その瞬間
鉄多が地面にふれた。
すると、男の足に砂がくっついてゆく。
いや、正確には砂鉄が。
砂鉄は凄い勢いで、上に浸食するようにくっついてゆき、あと数秒で男は息もできなくなるだろう。
そう、鉄多が驚かなかったのは当然だった。
こいつも普通ではないのだから。
「もうそこまでくっついたら、風でも吹きとばね〜ぞ!死ね〜!」
「‥‥‥」
「もう喋ることもできないか!は〜はっは‥‥‥。」
鉄多の笑いは突然止まった。
なぜなら、
「なんで、なんで俺ネイムが、風使いなんかにやぶられる。」
鉄多の言うとおりの事がおきたからだ。
男にまとわりついていた砂鉄は、ゆっくりと地面にもどってゆく。
「お前が、ネイムを鍛えてなくて助かった。俺の鉄のネイムのほうが少し強かったみたいだな。」