灯
自分の体と同じ位の幅のある大剣を舞うように振るう勇者。
その勇者の大剣を素手で受け流し続けている闇の住人。
その二人の攻防にヒカルとリリは何も出来ずにいた。
リリは冷静に戦況を見続けていたがヒカルは何も出来ない苛立ちを歯軋りに表しながら剣を構えていた。
ヒカルとリリはキルバァ達と五メートルの間をあけていた。もちろんリリの判断だ。
キルバァの剣が光る。キルバァもヒカルと同じ光の使い手らしい。
元々光を使う者は少ない。それにリリは驚いた。
対してヒカルは驚かなかった。と言うより違う所に注意を向けた。
完全な光じゃない。そしてこの光では闇を照らせない。
ヒカルは直感でそう感じた。根拠はない。
いきなりヒカルはキルバァが心配になり、援護しようと機をうかがう。
が。
ドッ
鈍い音と共に上半身が飛ぶ。
その上半身は黒かった。光る大剣の一撃を横っ腹に喰らったらしい。
キルバァは横に大剣を振り抜いている。
良かった。杞憂だったか。ヒカルが文字通り胸を撫で下ろす。
フッ
黒い上半身と下半身が消えた。
そして再び現れた時にはキルバァの背後にいた。
「君は心が傷だらけだよ。」と魔族が言うと、左手には黒い炎が浮かんでいた。
心焦炎!
ゴォッと音と共にキルバァは黒い炎に包まれた。キルバァは当然苦しんでいる。
リリが急いで魔法で水をキルバァにかける。
炎は消えない。よく見ると衣服も髪も焼けてない。ただ黒いオーラに包まれてるようにも見える。
「水?ダメダメ!消えないよ。これはね、心の傷から精神を焼き尽くす炎なんだよ。キルバァ君みたいな心に傷だらけな人が喰らうと一瞬で精神崩壊しちゃうよ!」魔族が楽しそうに言った。
ヒカルが手のひらから光を出し、黒い炎を払った。
しかし遅かった。
キルバァは無言。無表情だった。リリは青ざめていた。
二人は絶望を感じた。