「ところで由美…、アンタが付き合っている恋人の事だけど…」
その途端、由美の表情が険しくなった。
「森山…拓也の事?」「…っそ。あのね…」いきなり、由美は
「彼なら、渡さない。絶対に」と言った。
「え?」
「話しは全部、雅美から聞いてるよ。拓也を自分の恋人にするつもりなのよね?
ま、良子が合コンで拓也と知り合って、友達としてずっと親しくしていた事も私、前から知っていたから驚かないけど。こうなる事も、ある程度は予想もしていたし」
「そう。だったら話しは早いわねェ。由美が拓也の事を愛しているなら、私だって拓也の事を愛している。
アンタには悪いけど、拓也を頂くから」
それまで冷静に振る舞っていた由美は、飲んでいたコーヒーのカップをドンとテーブルに置いた!
「ふざけないでよ!」声を上げた由美。
回りの視線が一斉に集中する。気が荒立った由美は良子と激しく言い争いを始めた。
良子も負けてはいない。高校時代は仲良しグループの中ではリーダー格だったから、相手を威圧させるような強い態度に出た。
由美は激しい口調で言い返す。そこへ、例のウェートレスがやって来た。
「お客様、ココでは騒がないよう、お願いします!」
そう。ココはゆっくりと語り合ったり、読書などしながら過ごす憩いの場所。大声上げて騒ぐ事は厳禁なのだ。回りを見てみると、大勢の客たちの冷たい視線が集中している。
その中に拓也の視線があるなんて、二人は気付いていない。
「外に出ましょ!」
良子に促され、由美も外へ出た。近くの公園でバトル再開である。「良子、アンタは今まで、人の物を欲しがったり、リーダーぶって偉そうな態度を取って来た。今度は人の大事な恋人を取ろうとしている。自分の満足の為に、どんな事があっても手に入れたがる。
本当に卑しいよね!?」「それが、私なのよ」良子の開き直りと思える言い草に由美の怒りは治まらない。
「それでも人間なの!?ホント、救いようのないワガママ女だね!」「アンタ、誰に向かってそんな口叩いてるのよッ!?」
つづく