血まみれの手を握ってくれたのは、アンタだった。
「汚れるよ」
「…べつにいい」
ぶっきらぼうに言い捨てると、アンタはあたしを助け起こした。
「……服、汚れるよ」
「べつにいいって言ってんだろ!」
次の瞬間、アンタはあたしを抱き締めた。
温かかった……。
アンタの手が不器用に背中を撫でるのを感じたとたん、両目から涙が溢れだした。
「泣くな」
アンタはあたしの頭を抱いた。あやすように体を揺する。あたしは壊れた水道管みたいに涙を流し続けた。
あたしは言った。
「……あたし、ヤだ。アンタの手、汚れちゃう……」
キレイな手が。
憎しみと痛みの赤に。
アンタは笑った。
「手なんて洗やあキレイになる」
何気ないその言葉が。
どれだけあたしの心を救ったか。
アンタは今でも知らないだろう。
知ったところで、いつもとおんなじ態度を取るんだろう。
……アンタの事が好きだ。
愛しくて愛しくて、胸が破裂しそうなくらい、想いでいっぱいになる。
ありがとう。
本当にありがとう。
――あたし、アンタに会えて、よかった……。
悲しみが終わりを告げた。
血まみれには変わりない。あたしはこれからもこの道を一人で歩くのだろうけど。
もう一人じゃ、ない。
アンタを巻き込ませはしない。ただ、あたしから離れすぎないで。
手が届く距離で、いつまでもあたしの事を――。