恒星間大戦開始時、ギャームリーグ側を構成するのは三宙邦・総人口八二億・全人類宇宙に占めるGDP比率六.六%・生産力は年間辺り正規の軍艦一六六万隻・その他の宇宙船舶四千万隻であったのに対して、フリースユニオン六宙邦は総人口三六八億・GDP全宇宙比は三0.八%・毎年軍用艦艇六七0万隻・民間宇宙船舶に至っては二億隻を建造する力があった。
両陣営の間には実に四倍以上の差があったのである。
だが、反面で用意された軍事力を比較して見ると、ギャームリーグ側は三六個機動艦隊・一六個固定宇宙軍を主力に、正規の軍艦二二00万隻・兵員二0億人を持っていたのに対し、フリースユニオン軍の戦力は艦艇一六四0万隻・兵員一三二億人に留まっていた。
兵士数ではともかく、攻撃作戦では最も重要な機動部隊ではギャームリーグの方が質量共に充実していたのだ。
ギャームリーグは勿論、来るべき決戦に向けてこれだけの準備をしていたのだ。
彼等の準備はあらゆる面に及び、水の漏れる隙も無い程その計画は入念を極めていた。
彼等は乏しい国力で大国に打ち勝つ為に短期決戦の戦略を練り上げていた。
その為に徹底した軍制改革を発動し、三宙邦の軍を一早く統合し、無駄の無い組織と指揮系統を創り上げていた。
その中枢が《大司令部》であった。
更に、一気に敵を圧倒すべくあらゆる軍艦には強大な火力と防御力を施し、人的資源不足を見越して一艦当たりの必要人員は徹底的に減らされていた。
国内政策も戦争に向けて幾重にも統制が巡らされ、全ての星民がその目的に力を尽す様効率的に組み込まれていた。
正に《戦争の為に創られた芸術品》と評される所以である。
そして、彼等が採用した戦略は更に芸術的だった。
限られた生産力と少ない人口が枯渇しない内に勝利を収めるには、手持ちの戦力を最大限活用してやはり出来るだけ時間をかけずに敵戦力を壊滅させなければならないのだ。
味方の機動部隊は集中し、的の艦隊は分断させなければならない。
又、敵の弱点を的確に叩き、同時に足留めを図る必要がある。
その為に採用されたのが電撃作戦だった。
ギャームリーグの機動部隊は足の早さを最大限に活かして、一つの目標に殺到し、反撃の時間も余力も与えないまま一挙に撃破・制圧してしまい、敵の戦線を崩壊させた。