奈央と出会えたから。<142>

麻呂  2008-05-05投稿
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* * * * * *

あたしは、バスルームに行き、聖人に借りたスウェットから制服に着替えた―\r



ふと携帯で時間を確認すると、



リビングに差し込む日差しが、日中で最も強まる時間帯になっていた―\r





『マジでもう帰んの?!早くね?!』



『うん。今朝、ちょっとお母さんとケンカしちゃったから。気になっちゃって‥‥‥。』



『だって、奈央の母さん、働いてんだろ?!まだ帰ってないじゃん。』



カチ――



煙草に火を点けながら、聖人が言った―\r


『うん。何時も夕方帰って来るんだけど、今日はあたし今直ぐにでも、お母さんの働いているお弁当屋さんに行って謝りたいの。』



『‥‥‥そっか。
それでさっき、泣いてたのか‥‥‥。』


そう言いながら、聖人は座っていたソファーから立ち上がり―\r



灰皿に、吸っていた煙草を軽く押し当てた―\r



『分かった。んじゃ帰ろう。』



クルッとあたしの方へ一歩近付いた聖人は――



チュッ――



って――



おでこにキスをしてくれた――



『泣き虫が直るおまじない。』



キスと同時に―\r



あたしのおでこに、聖人の鼻の先が、



ちょんって当たった―\r



『あたし、泣き虫じゃないよ。聖人といると、涙もろくなっちゃうだけ。』



見上げた視線の先に―\r



聖人の優しい目があった―\r





『俺の前だけにしろよ。“涙もろい奈央”になるのは。』



『うん。』





『男は、女の子の涙に弱いんだから‥‥な。よし、行こうぜ。送ってくから。』


あたしは、聖人に家まで送ってもらう事になった――



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