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『聖人。今日は、ありがとう。髪を染めてもらったり、聖人特製の美味しいチャーハンまでご馳走になったり。』
『おぅ。』
たった一言だけ返って来た言葉が―\r
たった一言だけなのに―\r
あたしの心をキュンとさせる―\r
『奈央。』
『なぁに?!』
『今度、俺とサトルが先輩に車に乗せてもらう時に、一度だけお前も誘うけど、大丈夫か?!』
『本当に?!』
聖人の口から、あまりにも意外な言葉が出て来たから―\r
思わず、あたしの口から出た言葉は―\r
『嬉しい!!それで、どこにドライブに行くの?!』
一瞬、聖人はポカーンとした顔をしたかと思うと、
『ははははは。は、腹痛てぇ〜‥‥‥。』
――なんて笑い出したんだ。
『あたし何も面白い事言ってないよぉ?!。』
『違うよ!!奈央が、俺とサトルが何時も話してる車やバイクの事を知りたいって言うから。
先輩に頼んで一回だけ、お前も乗せてくれって頼んでやるよって意味だよ!!』
ソレは、この時初めて自覚した訳ではないけれど、
やっぱりあたしは天然なんだなって思いつつ―\r
聖人があたしの気持ちを考えてくれていると言う事が、
何よりも嬉しくて―\r
『ありがと聖人。楽しみにしてるね。』
胸がいっぱいで―\r
これだけ言うのが、精一杯だった―\r
たわいのない話をしながら、あたし達はゆっくりと―\r
家路に向かい―\r
寄り添い―\r
歩いていたから―\r
秋の冷たい風にも―\r
全然寒くなかったんだ‥‥‥‥‥。