夢野とおれは、性格の面では正反対な人間らしい。あいつは憶病で泣き虫でへたれだけども、おれっていうと何かとその反対を行くからな。だけどもそれぞれの性格の起源なんてものを遡(さかのぼ)ってみると、そもそもは同じところにたどり着くのだ。いまこうして誇張でなくて、日本とブラジルくらいまでその道が隔たっているということは、おれが考えるに、環境の違いがそのまま性格に反映されたんじゃないかと思う。
ぼくらは同じ家に住んでいる。しかし欠点だらけの朝野くんの言うことは案外正しいのかもしれない。というのも朝野くんが、ぱちぱちとでもムニャムニャとでもとりあえずは起きているとき、必ずぼくは四の五の言わずに眠っているから。
二人とも典型の型にピタリと当てはまるような朝型と夜型の人間で、あいつが寝ているときにはおれが起きていて、おれが寝ているときには云々(うんぬん)、というような日々の状態だから、正直おれと夢野との仲は大丈夫なのだろうかと疑ったりする今日このごろなのだけれど、なにせちっちぇえころからいつも一緒のおれらのことだし、まあ安泰だな。
まあ、そうかもしれない。昔ニュースで見たのだけれど、二つの頭がつながっている双子の奇人──残念ながら無理に切り離そうとして、たしかどちらか一人が? それとも二人とも? 亡くなってしまった──そういう人よりも、ぼくらはたしかに緊密な間柄なのだから。
いつのまにか暗くなっている。こいつは参ったな。しでかしたな。いや、危うくしでかすとこだ。空にうずくまる歪(いびつ)な光が、刻々と大地に溶けていく。早く寝よう。おれは朝野だけに朝型なんだ。もちろん、朝野という名だけに朝型なのだか、朝型だから朝野なのだか、そんなことをおれは知らない。だが、雲の上に届かぬ光、そんなものに用はない。